受講生・修了生のストーリー

地域ブランドの立ち上げ

渋谷啓子さん

格子柄の美しい色彩で,篠山の風土や文化を映し出す「篠山タータン」(通称:sasatan)を考案。多様な主体と連携し、商品開発を実践中。昨年、空き店舗でのショップ開業を果たした。

現在の活動とこれまでの足どり

格子柄の美しい色彩で、篠山の風土や文化を映し出す篠山タータン(通称:sasatan)を考案した渋谷啓子さん。sasatanには、篠山の山並みや丹波の黒枝豆を象徴する「篠丹」、デカンショ祭りの提灯や丹波立杭焼の炎を連想させる「祭彩」など、計5種類で展開されています。渋谷さんは、これまでにその格子柄を織り込んだ一筆箋やクリアファイルを開発し,最新作であるマスキングテープには、SNSを通じて海外からの大量発注も入り始めました。2018年秋には、sasatanの発信基地となるギャラリーも完成し、いよいよ篠山の内外から注目を集める存在になりつつあります。

イノベーターズスクールに入学し

渋谷さんは、大阪府高槻市のご出身です。結婚を機に旦那様の実家のある篠山に移住されましたが、職場が大阪市内だったこともあり、ふだん篠山で過ごす時間は多くなかったそうです。長女をご出産された後も長らく長距離通勤を続けておられましたが、やがてその生活にも区切りをつけたいと思うようになりました。その背景にあったのは2つの想いです。一つは、愛娘と過ごす時間を増やしたいという母としての想いであり、もう一つは、数年前に廃業した家業の商店をなんらかの形で再生させたいという想いでした。渋谷家は、義祖父の代から城下町の玄関口とも言える場所で商店を営んでおりましたが、時代の流れもあり、数年前に店を閉じていたのです。

そんなことを考え,退職を心に決めた矢先,渋谷さんはチラシで篠山イノベーターズクール2期生募集の情報を知りました。偶然にも1期生に知り合いがいたことから,スクールの雰囲気や内容をしっかりと確認した上で,篠山での新しい暮らしをつくるきっかけにと入学を決めました。

イノベーターズスクールで得たもの

格渋谷さんは、2期のCBL「草木を活かす手仕事づくりプロジェクト」を受講されました。そこでは、講師である先輩経営者から、農村で生業を作ることの楽しさややりがいを学ぶとともに、大変さがあることも教わりました。そして、様々な専門分野から集まる、高い志を持った仲間との出会いは、貴重な財産となりました。スクール修了後も、仲間の活躍に大きな刺激を受けているそうです。

渋谷さんは、最初から篠山タータンの構想を持っていたわけではありません。篠山に根ざした何かを模索する中で、中間発表が一週間前に迫ったある日、突然アイデアが降ってきたそうです。それからの渋谷さんの活動は、めざましいものでした。篠山らしさとは何かを地域の色々な人に尋ね,2週間に一度、プロジェクトメンバーとsasatan会議を開き、アイデアを具体化していきました。その際、スクールのコーディネーターが親身になって伴走してくれたことが、大きな支えになったと言います。

今後の展望

こうして、試行錯誤を繰り返した結果、600を超えるパターンの中から、sasatanの構成を決めて、さらに豊かな丹波篠山を表現した5つのカラーが生まれました。そして、その数ヶ月後には、リノベーションによって、扉を閉ざしていた商店もギャラリーとして生まれ変わりました。

「sasatanは、私が篠山に存在する意義を与えてくれた。」と渋谷さんは語ります。sasatanを制作する過程で、地域の多くの人たちとふれ合い、語り合い、篠山への愛情を表現する手段を持つことができたからです。

今後は、sasatan柄の生地を作り、デザイン関係の方とのコラボも増やしていく予定です。ギャラリーではランチを提供することも考えています。お客さんや関わってくれる人をワクワクさせるのはもちろんですが、そのためにもまずは自分自身がワクワクすることに取り組んでいくつもりです。閉店した商店に風を通したいという想いから始まった渋谷さんのチャレンジは、その枠を大きく越え、ものづくりの伝統を持つクラフトの町・篠山に新しい風を吹き込みました。これからもsasatanは変化し続けながら、篠山の地に根付いていくことでしょう。




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2024.3.30 SAT
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